「ゲゲゲの女房」オリジナル・サウンドトラック


 『ゲゲゲの女房』オリジナルサウンドトラックには、80曲もの楽曲の中から窪田ミナ自身によって選曲された39曲が収録されている。音楽づくりの秘密と工夫についてうかがった。


―― 作曲にあたって、どんな打ち合わせをされたんでしょう?


窪田 最初にうかがったのは、「この物語は布美枝と茂の青春ストーリーだ」というお話でした。ただ、「布美枝は今までの朝ドラのヒロインとは違って、前向きで明るく突っ走るというタイプではないので、そこは意識してください」と。 ポイントは成長のドラマで、その過程を大切にしたいということでしたので、音楽も二人の成長ドラマという点を大事に考えました。

―― ケルトの音が取り入れられているのには驚きました。発想の背景とねらいは?


窪田 はじめから「この作品にはケルトの音が合うだろうな」と考えていました。島根や出雲地方とアイルランドがとても似ていると思っていたんです。どちらも海が近く、山と森があり、妖怪や妖精が棲んでいる。 空気感が同じ気がするんです。すごく似ているからぜったい合うはずだと。ふつうに考えると、こういう作品ですから和風の音を使うだろうと思うんですが、それだと当たり前すぎてつまらないし、もう誰かがやっているだろう。 それで、ケルトの音が入れば面白いものができるんじゃないかと。昔話の曲や妖怪の曲にも使っていますが、布美枝の曲などにもケルト風のメロディやサウンドを忍ばせています。

―― 収録曲は苦労して選ばれたそうですが、特に印象深い曲はありますか?


窪田 「布美枝のテーマ」はメインテーマとして最初に作った曲なので印象に残っています。重要な曲とされていたのが「茂のテーマ」。「勇気と希望」も、「これは大事な曲ですから」と念を押されて書いた曲です。 「光に包まれて」はおばあちゃん(登志)のテーマで、そのヴォーカル版が「精霊の国」になります。

 妖怪の曲は楽しんで書けました。「おばばの昔話」「貧乏神」「あやしい森」などですね。水木しげる先生の妖怪画を見ながらイメージをふくらませました。
 浦木のテーマである「イタチの陰謀」は、自分で書いていて「これはうさんくさい」と笑ってしまった曲です。その浦木が恋をして浮かれている曲が「ハンチングと口笛」。
 「木の葉と小判」はもともとメニューにはなく、打ち合わせで「貧乏の曲もほしいね」という話になり追加しました。貧乏だけど悲観することなく、「しようがないさ。なんとかなる」とちょっと楽しんでいるようなイメージで書いています。
 調布編ではリアル貧乏の話になってくるので、不遇に耐えるシリアスな雰囲気の曲が多くなりました。「静かな決意」「明日への息吹」「信念を貫くペン」などです。苦しい生活の中で、 布美枝と茂がほんとうの愛情で結ばれ、夫婦の絆が生まれてくる。そんな二人をイメージした曲が「ご縁の糸」「二人の絆」です。

―― 放送が始まって反響はいかがでしょう? また、ご覧になった印象は?


窪田 朝ドラの影響力はすごいですね。疎遠になっていた人から連絡が来たり、両親も、朝ドラを見る習慣がなかったのに毎日観るようになって、日曜日に放送がないのがさみしいと言い出したり(笑)。
 私もDVDをいただいて観ているんですが、オンエアでも観てしまうんですよ。また明日も観ようという気になります。俳優さんたちがどんどん板についてきているし、ほんとうに面白い。
もちろん音楽も気になって、「この曲はとても気にいられて、毎回のように使われているな」と思ったり。本編では、音楽をぶつ切りにせず、ドラマの盛り上がりと曲の盛り上がりが合うように長く使ってくれることが多いんです。 大切に使っていただいているのが感じられてうれしいですね。
 この作品の音楽は、喜怒哀楽を押し付けるようなわざとらしい曲ではなく、自然に物語に溶けこんで、でも、しっかりと琴線に触れるような曲にしたいと思って書きました。それが演出のめざす方向性ともうまく合い、 曲を生かした使い方をしていただいている。とてもありがたいし、うまくいっているなと思います。

(2010.06.03)

Interview by 腹巻猫(劇伴倶楽部)